空しか、見えない
 小花柄のワンピースを着たフーちゃんは、岩井で会った頃より、ぐっと体が引き締まった印象がある。純一に続いて、グラスを持ち上げた。

「そして、残念ながらここにはいない、のぞむと義朝のことも思いながら」

「乾杯!」

 皆の声が続く。
 ショートカットのバーテンダー、まゆみは、胸に輝くブローチをつけている。

「では、お言葉に甘えて私も頂戴します」

 そう言って、小さなグラスで白ワインを飲んだ。
 千夏は、ここへ来るのがもう4度目になる。
 はじめは、ジムの帰りにサセに連れて来てもらった。
 次は、環とふたりで来た。そして、一度はひとりきりで来たのだ。
 カウンターに座り、はじめて彼女に向き合ったとき、まるで昔からよく知っている仲間のような気がした。
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