空しか、見えない
 学校も仕事のキャリアもまるで違っているのに、お互いに笑い合っただけで、心が温かくなる。まゆみは、夜の仕事をしているというのに薄化粧で、笑うと頬に深くえくぼが浮かんだ。
 どんな質問にも、率直に答えてくれる。

「義朝は、優しかったでしょう?」

 ありきたりな質問を向けると、彼女はこう答えたのだ。

「でも、誰にでも優しい人って、案外彼女にはそっけなかったりするんですよ。もっとも、私にはそこが好ましかったのかもしれませんけど」

 千夏は、短いやり取りの中で、彼女をすぐに好きになった。さすが義朝だよ、と言ってあげたかった。
 そしてますます、ここに義朝がいたらどんなにか楽しかったろうかと思った。
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