空しか、見えない
「フーちゃん、劇的に痩せた気がするね」

 黒いジャケットの胸元に、深く開いたターコイズのインナーを着たマリカは、黒のストッキングに包まれた長い脚を組んでフーちゃんを肴にする。

「だって、放課後はほぼ毎日泳いでいるもん。体育の教師が嫌味な奴でさ、あー、そんな泳ぎじゃ、絶対に遠泳はもたないなとか何とか、いちいち口を挟むのよ」

「へー、その教師って独身?」

 マリカが訊ねると、フーちゃんは眉を寄せる。

「何それ、当たり前よ。あんなのとね、結婚する奴がいたら見てみたいわ」

 純一はマリカと顔を合わせる。

「なんか、いい予感がしない?」

 純一の声に、環も俯いて笑っている。
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