空しか、見えない
 やがて、気の多い千夏は、いつも体にエネルギーが漲っているように見える筋肉質な環にも引かれるようになった。けれど彼は、はっきりこう口にした。

「サセは、やっぱりのぞむが好きなのかな。どう思う、千夏?」

 サセといると、いつも損な役割だった。やがて別々の大学から会社へと、それぞれの道を歩むようになり、自分は様々な男と付き合ってきた。そのつどサセに相談したりしているうちに、やっぱりサセのような女は強いのかなと思うようになった。
 一見柔らかくて、決して声高でもないのに、一度自分が決めたことには芯を通す強さがある。
 サセは、ずっと、細くて長い道を歩き続けている。たとえひとりぼっちになっても。
< 496 / 700 >

この作品をシェア

pagetop