空しか、見えない
 窓辺に置いた子機を手に、7階の部屋から下を見下ろす。ワンルームの部屋だが、窓からは水の流れが見え、川べりには、桜の樹が立ち並んでいるのが、街灯に照らされている。
 千夏は、惚れっぽいのだ。昔から、失恋したといっては、長電話になり、時には家にまでやってきて泊まり込んだ。そのわり、終わったはずの相手とまたよりを戻していたり、さらにその前のが戻っていたり。シリアルナンバーでも振っておいてほしいくらいなのだ。
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