空しか、見えない
「実家にいるみたいだけど、これから呼び出しちゃう?」

 ん? と訊ねてみると、彼はまた静かに首を横に振る。

「いいよ、もうこんな時間だし、さっき少しだけど話せたからさ」

 千夏からの連絡を受けて帰国した遠藤のぞむが、宙を見るようにそう答えた。
 今日の帰国を知らされて、千夏は品川まで出迎えたのだ。本当は佐千子にも伝えたかったけれど、とりあえず約束だったので、ひとりで迎えた。
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