空しか、見えない
「いえ、いくらなんでも、無理です。私は25メートルも泳げないくらいで、とても遠泳なんて、出来っこない」

 まゆみが顔の前で手を振る。
 環は、少し間を置いて言った。ひとりほろ酔いのようだった。

「サセにも、みんなにも叱られるかもしれないけど、この夏の遠泳が終わったら、俺、正式にサセにプロポーズするから。だからサセ、その時には、ちゃんと返事して」

 横にいた純一は、大きくため息をひとつ、ついた。

「参るよな。何だか応援したくなるじゃないか」と、顔をしかめた。
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