空しか、見えない
ルーの作った鶏肉と野菜の炒め物が、白テーブルの上で、萎れていくようだった。
ベルトで止めておけば、何とか椅子にも座れるようになった赤ん坊が、自分の前に置かれた皿の上の料理を、手でぐちゃぐちゃとかき回しては口に運び、なめていた。
顔中油まみれにしているのに、今のルーの目には入っていないようだったから、のぞむが手を伸ばしてティッシュで拭いてやった。
「あなたが怒るのは、わかっていた。But,I really love you,Nozomu.私は、のぞむを愛しているの。私たちはあなたの本当の家族になりたい」
のぞむは退院してもすぐに仕事に復帰はできなかった。元々痩せ気味の体なのに、体重は、いつもより12キロも減り、柳のようになっている。考えてみたら、ニューヨークへ来てからは、ビールや安ワインが主食代わりだったから、禁酒を始めた時点で体重は減っていった。職場へ行けば賄い飯もあるが、それにも頼れない。