空しか、見えない
 ルーは、サチと自分が交わしたメールのやり取りを、すべてのぞむに見せてきた。
 サチは、どんな思いでメールを受け取り、そして返信をしていたのだろう。そんなに英語が得意なわけでもないだろうから、一所懸命辞書と向き合ったのかもしれない。
 サチからのメールは、彼女の心を素直に表していた。
 なぜ、ルーから急にこんなメールをもらうのか? と、戸惑っているようでも、憮然としているようでもあった、最初の返信。
 あなたはのぞむをどう思うの? 本当に、愛しているの? だったらなぜ迎えに来ないの? ぼうやと私は、のぞむを本当に必要としている。
 畳みかけるように続くルーのメールに、サチは一つひとつ答えながらも、ついにこんな結論を出していた。

〈のぞむを迎えに行く気はありません。のぞむがどうするかを決めるのは、彼しかいないはずだから。It cannot return until it finds something.自分は何かを見つけるまでは帰れないのだと、この間、私に言ったのです。彼が言ったその言葉を、私は信じます。
 そのsomethingが、もしあなたたち母子との生活なのなら、私は応援するしかありません〉

 それがサチからの、最後のメールだった。
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