空しか、見えない
 帰ってからでもいいはずなのに、佐千子は急に待ちきれないような気持ちになり、更衣室から電話をかけた。
 シャワーを浴びて、後は帰って軽い食事でも取って寝るだけだ。タンクトップとトレーニングパンツに着替え、頭にバスタオルを巻いたまま、ベンチに座って電話をする。体重はそんなに変わらないが、確かに二の腕や腿のあたりはしまってきたようだと、鏡に映った自分を改めて眺める。
 つながってコールするが、千夏は出ない。家の電話にも出ない。いつもならわりとすぐにコールバックしてくるので少し待ってみたが、それもかかってこなかった。

〈今、ジムを出るところです。全然来ていないみたいだけど、まさか体調とか壊していないよね? サチ〉

 送ったメールにも、返信が来なかった。
 何か急に肩すかしを喰ったような気持ちになった。
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