空しか、見えない
「わざわざ来るなんて。いいじゃないの、放っておいてくれたって」

 千夏は投げやりな口調で言い、さらに続けた。

「サセって、ばっかじゃない?」

 ひどい言葉なのに、なにも返事がもらえなかったときよりずっと佐千子の胸に染みた。久しぶりに、千夏からの温度を感じた。
 どちらともなく、並んで歩き始める。
 千夏は、かかとの高いブーツにミニスカート、ロングコートの前を開けて、アクセサリーをあちらこちらに光らせている。
 千夏に促される形で、有楽町のオープンカフェに入った。冬だというのにストーブの火が暖かく、それぞれのテーブルは、たくさんの人で賑わっている。
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