空しか、見えない
佐千子は、ホットワインにはちみつをたらして、かき混ぜた。ヨーロッパのどこかの国では、オレンジを皮ごと入れて飲むそうだ。作ってくれたのは、大学生の頃ののぞむだった。佐千子が風邪気味で、デートを早く切り上げようとしていたときだった。
「ほら、飲め。これ飲んで帰ったら、きっと治るって」
のぞむの言葉は、なんだって鮮明に覚えているのが切ないのだ。
ホットワインは、見事に甘くなった。
「いいじゃない。千夏はなんだかんだ言ったって、いっぱい付き合う相手がいるんだから。わたしなんか、なんにもないよ」
「だから、それも頭にくんの。環だって、ずっとサセばかり見てる。あのジムのインストラクターだって、サチさん、サチさんってうるさいったらない。なんであんたばっかモテんの? 私はいっつも、サセの引き立て役」
「ほら、飲め。これ飲んで帰ったら、きっと治るって」
のぞむの言葉は、なんだって鮮明に覚えているのが切ないのだ。
ホットワインは、見事に甘くなった。
「いいじゃない。千夏はなんだかんだ言ったって、いっぱい付き合う相手がいるんだから。わたしなんか、なんにもないよ」
「だから、それも頭にくんの。環だって、ずっとサセばかり見てる。あのジムのインストラクターだって、サチさん、サチさんってうるさいったらない。なんであんたばっかモテんの? 私はいっつも、サセの引き立て役」