空しか、見えない
 佐千子はホットワインを飲み干した。のぞむが作ってくれたときは、本当に熱が下がりそうな気がしたが、今日は体が熱くなって、のぼせそうだった。
 しばらくじっと夜空を見ていた。こんな都会の真ん中なのに、冷えた空に星が光って見えた。

「もういい? 言いたいことは言った?」

 千夏の方を覗き込むと、口をへの字に曲げている。

「こんなくっだらないことばっか言って、それは後悔してるでしょうね?」

「いいえ、反省なら少しはしてるけど、後悔なんてしてません。だって、もうこれ以上サセには、言わずにはいられなかったもん」

 ふたりで顔を合わせ、しばらく子どもみたいに睨み合った。ふさふさしたつけまつげで覆われた千夏の目が潤んでいった。
 それを見ていたら、佐千子もなんだか泣きたくなった。
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