空しか、見えない
 ハッチの頃の不安もたくさん思い出した。本物の海を、泳ぎきれるだろうか。波を乗り越えて、進んでいけるだろうか。広い海にたじろがないだろうか。みんなと同じペースで、ついていけるのだろうか。大体自分は、バディたちから、仲間はずれにされないだろうか。
 ハッチの仲間たちと出会うまで、芙佐絵はあまり友達ができなかった。いつも分厚いレンズの眼鏡をかけていたし、自分も認めるけれどアニメオタクっぽかった。
 でも、そこに憧れの純一がいて、当時から恐ろしく大人っぽかったマリカがいて、いつも誠実なサセがいて、何事にも率直な千夏や、リーダーシップを取る環、シャイだけど本当はとっても優しいところがあるのぞむや、ひょうきんな義朝がいた。
 ハッチは最強な個性派揃いのメンバーだった。
 今でも、担任としてクラスの中でグループを作るときに、自分はハッチのメンバーだった頃のことをよく思い出すのだ。
 そんな、いい仲間たちができることを、生徒たちみんなにも味わわせてあげたいと思う。それは、生涯の宝物になるのだから。
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