空しか、見えない
 好きという気持ちは、消えていかない。好きだけど、考えただけで頭にくる。好きだけど、もう考えるのはよそう。好きだからって、待っているばかりは辛い。のぞむを思い浮かべるときには、どれも本当の気持ちだ。でも、必ず文の頭には、「好き」がくる。

「あーあ、知らなかったな。こんな素敵なデートコースがあるの。25にもなるまで、私は誰にも連れてきてもらわなかったよ」

 佐千子が呟くと、

「ようし、じゃあ、ぶっ飛ばそうか」

 純一はそう言って、車の窓を開け、アクセルペダルを踏み込む。

「わー、気持ちいい。なんだか、羽が生えて飛んでいくみたいだね」

 思わず拍手をして、足もばたばたさせながら佐千子が喜ぶと、純一も子どもみたいにはしゃぎはじめた。
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