空しか、見えない
「Go! Go! もっと行くぞー」

 そのときだった。後方に、ちかっとした光を感じたのも束の間、後ろから来た車の屋根にサイレンが灯り、追いかけてきた。

「やっべえ、取り締まりだよ。速度違反だ」

「へー、逃げようよ、純一」

「サセって案外大胆」

 純一は、ブレーキを踏み、速度を緩める。後続の覆面パトカーが四灯の停車ランプを点滅させ、道の片側へ寄るよう指示してくる。純一は停車して、窓を開けて待つ。
 後ろの車から、青い制服を着た警察官が降りてきて、純一を降車させ、後ろの車へと連れていった。
 その間、佐千子は助手席でただじっと待つしかなかった。まるで、楽園から連れ戻されたような気分だった。はしゃいでいた気持ちが、急に萎んでいった。5分以上は、かかったはずだ。いつの間にか、CDは終わっていた。
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