空しか、見えない
「あー、やっぱりいいなー」

 佐千子が思わず呟くと、ごじべえのおじさんは言う。

「そうだろ、岩井はいいんだよ」

 佐千子は、思わず靴を脱いで、砂の上を進んでいく。水際で足を遊ばせると、まだ冷たい水が染みて来る。
 あと3か月。そういえば、ハッチの頃も、そんな風に約束の日までの日にちを数えていたっけ。
 今度の遠泳は、2時間だという。
 そんなに長い時間、本当にみんなで泳ぎ続けられるのだろうか。佐千子は、きらきらと煌めく水面を眺める。
 そのときには、みんなが揃っていられるのだろうかと想像する。
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