空しか、見えない

第23話

【PM6:00】

 ノートパソコンがちゃらんと音を立て、メールを受信したのを知らせる。
 日曜の午後6時、いつもこのくらいの時間に、『サセ新聞』は届く。
 ニューヨークと東京との時差は、マイナス14時間だ。サセが月曜の朝、出勤前に送るメールが、日曜の夕刻に届く。
 サセらしく、この2ヶ月は、毎週1号も落とさずに、ほぼ同じ時間に送られてきている。
 サセは、まるでたったひとりで深夜にランニングをしているみたいだなと、筆無精ののぞむは、感じる。

「You got a mail.サチコのニュースペーパーじゃない?」

 台所でフライパンをあおっていたルーが、手を止めてのぞむの方を振り返る。
 のぞむは膝にルーの子どもをのせて、テーブルの前に運ばれてくる香り豊かな料理を待っていたところだ。
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