空しか、見えない
 佐千子にも訊いてみたが、

「とりあえずジンジャーエールに」

 と、穏やかではない。

「ねえ、何だかみんな陰気な感じよ。特にそっちの男たちはふたりとも」

 千夏の声に、隣の環は深々とため息をついた。革のジャンパーがきしむ音を立てた。

「ほら、だから、直接、自分で言った方がいいよ」

 顔も上げずに、環は純一に向かってそう言った。純一は、頷く。

「今日は、これで全部だよね」

 佐千子の方を見て、確認している。

「みんなに集まってもらって、ごめん。俺、サセと環にはもう伝えたんだけど、遠泳、行けなくなった」

「ひえーっ」

 芙佐絵は、そう叫ぶと自分の手で口元を押さえた。
< 606 / 700 >

この作品をシェア

pagetop