空しか、見えない
 言い始めると勢いがつき、熱くなった。そんな千夏の背中に芙佐絵が手をあて、とんとんと叩く。千夏をなだめているようでもあり、自分に言い聞かせているようでもあった。そして、呟いた。

「もういいじゃん、きっと仕方ないんだよ」

 芙佐絵はそう言い、まゆみの方を見て続けた。

「ただ、純一が、そんな人と婚約するなんて、私、夢にも思わなかったわ。そんな人で大丈夫なかのしら」

 芙佐絵は言い過ぎだと思いながら、千夏も思わず呟いてしまう。

「フーちゃんは、純一が好きだったからね」

 サセは環と目を合わせ、一緒に頷く。芙佐絵は、両手で、顔を覆う。
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