空しか、見えない

第25話

「あの、待ってください。すぐすみますから」

 まゆみは、静かにそう言うと、カウンターの中から一葉の写真を取り出した。

「これ、言うまでもなく、皆さんの写真です」

 環や芙佐絵、千夏に佐千子が順に身を乗り出して、覗き込んできた。

「えー! 懐かしいのが出てきちゃった。これさ、最後にごじべえさんの前で撮った写真だよ。合宿から帰るときになって、もうバスも来てるっていうのに、ハッチだけ、こんなことしてて、叱られたんだよね」

 千夏が、ハッチという言葉を口にしただけで、純一の心には切ない感情が溢れ出した。みんな揃いの麦わら帽子をかぶった写真に、純一の記憶も一気にそのときへと飛んでいく。

「義朝が、どうしても、最後にごじべえのおじさんと一緒に撮りたいんだって言ってな」

 環も、思い出して呟く。
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