空しか、見えない
「この写真、たぶん、他の皆さんは持っていないんじゃないかと思います。義朝、みんなの分を焼く前に、フィルムなくしちゃったんだって言っていましたから。その頃はまだフィルムで撮ってたって」
「そういや、そうだったよな」
環の声に、佐千子も相づちを打つ。
「私ももらっていない。新聞にも、使わなかったと思うわ」
「私は、皆さんおひとりずつを、この写真ではじめて、教えてもらったんです。一人ひとりの名前とか、あだ名とか。それに、確か、この佐千子さんのリュックは、お母さんの手作りなんだとか、環さんの肌は夏になるとチョコレート色になるんだとか、純一さんの背が、このときすでに178センチもあったとか、そんな風に順繰りと」
純一は、ふたたび腕時計を見た。
「ごめん、本当に時間がない」
まゆみは深く頷いた。
「そういや、そうだったよな」
環の声に、佐千子も相づちを打つ。
「私ももらっていない。新聞にも、使わなかったと思うわ」
「私は、皆さんおひとりずつを、この写真ではじめて、教えてもらったんです。一人ひとりの名前とか、あだ名とか。それに、確か、この佐千子さんのリュックは、お母さんの手作りなんだとか、環さんの肌は夏になるとチョコレート色になるんだとか、純一さんの背が、このときすでに178センチもあったとか、そんな風に順繰りと」
純一は、ふたたび腕時計を見た。
「ごめん、本当に時間がない」
まゆみは深く頷いた。