空しか、見えない
「なんか、違うもう1回、に聞こえるの私だけ?」

 千夏が環に耳打ちする。

「俺も、そう聞こえるね。なあ、このふたり、案外、うまくいくんじゃねえ?」

 佐千子は微笑みながら、噂のふたりの様子を見ている。フーちゃんが、一番乗りになるのかもしれない。みんなの中で、一番最初に、こんないい人を見つけたのだ。

「吉本さん、フーちゃんには、後でふたりきりでじっくり教えてあげてもらえませんか? だけど、あれでしょう? こういう道具も、今日本当はふたりきりで使うために、用意されたんでしょう?」

 さんざん、やらされてさすがに疲れたのか、吉本も座席に座り、まゆみにビールを頼んだ。

「はあ、まあ。話題が尽きるといけないと思いまして」

 またみんな、笑ってしまう。
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