空しか、見えない
「吉本さんって、なんていうか天然なんだよなー」

 環が感嘆している。
 ひとしきり笑った後で、環が切り出した。

「俺さ、ひとつ考えが浮かんだ」

「何、環の考えって」

 千夏は、いよいよ空腹を感じたのか、保留にしてあったフィッシュ&チップスを頼む。

「うん。岩井の遠泳のことだけどさ。せっかくごじべえの予約もしたんだから、どんなに人数、少なくなっても、決行しないか?」

 佐千子は、千夏や芙佐絵と顔を見合わす。女子だって、自分以外は泳ぎはうまいのはわかっている。とはいえ、あとマリカひとりが加わって、たった4人であの広い海を泳いでいくとなると、どこか心細いメンバーであるには変わらなかった。
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