空しか、見えない

 週末、ジムの帰りに直接実家へ行く機会が増えた。妹と3人で夕食のテーブルを囲んだり、翌日明るいうちにドライブに出て車の運転を教わったりと、家族の時間が増えた。
 父に助手席に乗ってもらい、鎌倉の郊外から、少しずつ市街地へも入るようになった。実家を離れているうちに、街には、雰囲気のいいカフェやレストランもずいぶん増えたようだ。
 何も都心のワンルームマンションに、ひとりで侘しく暮らしていなくたっていいのではないか。ここから通わせてもらってもいいのではないか。妹は何かと騒々しいけれど、煩わしさも家族の良さなのだ。
 家族と暮らす時間の優しさに馴染み始めた頃、逆に父の方から、こう切り出された。

「もう、いいだろう。鎌倉教習所からも、そろそろ卒業証書を出すとするか」

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