空しか、見えない
そう言われたら帰らずには済まないような気がして、その週末は泊まらずに自分のマンションへと戻った。
鍵を開けて、中へ入った瞬間に、LINEでマリカからメッセージが入った。
〈来週末、帰国します。今回は2週間ほど滞在するけど、ミーティングできるかな〉
すぐに「既読」の数が増えていき、OK! WELCOME!などのスタンプが押されていく。
佐千子は、そのメールを読んで心臓がどくんどくんと高鳴るのを覚えた。
〈到着便を教えて。週末なら、成田まで私が迎えに行く〉
〈まじ?〉
というたったの3文字に派手な、びっくり顔のスタンプを送ってきたのは千夏で、
〈サセ、運転できたっけ?〉という文に、やはり派手なクエスチョンマークのついた顔スタンプを押してきたのは、芙佐絵だった。〈大丈夫なのか?〉と、書いてきたのは環で、スタンプがない分、真面目な心配に見えた。
佐千子はといえば、大真面目だった。そのために、ひと月近く週末を返上して、運転を習ったのだ。成田までだって、夏の岩井にだって、自分が運転していくつもりだった。誰かに頼ってばかりいるのは、もうやめにしたい。