空しか、見えない
 到着予定よりも2時間も早く、成田空港に着いてしまったわけだ。
 書店で週刊誌を買って、適当なカフェを見つけて入る。
 iPhoneが、ぷすっというLINEで設定した着信音を知らせる。ぷす、ぷすっと音が続く。
 慌てて画面を開くより先に、床をこつこつ叩くギプスの音が聞こえた。

「見っけ!」

 ニットキャップに、パーカとジーンズ姿の環が前に立ち、ちょっと照れたように笑っている。

「こんな早く集まっちゃってさ。暇だよねー、私たちも」

「千夏も来ちゃったの?」

 佐千子は、驚いて立ち上がる。

「私たちも、来ちゃった」

 花柄のワンピースにカーディガンを羽織った芙佐絵の横には、ジージャン姿の吉本が立っている。

「このふたりは、空港までドライブでデートに来たみたいよ。私たちは成田エクスプレスだもんね。帰りは、サセが乗せてよね」

 ショートパンツにダウンのベストを着た千夏が、環とふたりを指差してみせた。

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