空しか、見えない

 みんなに迎えられたマリカは、それぞれとハグをする。
 佐千子の運転する車の助手席でも寛いだ様子で、そのまま彼女の東京のマンションへと向かった。
 マリカはすぐにシャワーを浴びて、すっぴんにひっつめ髪になった。抜けるような白い肌が、ますます冴えて見えた。

「ねえマリカさ、もしかして、会社、辞めちゃったわけ?」

 フランス土産のワインをさっそく開けながら、千夏は訊ねる。
 佐千子は、帰りの運転があるので、冷たいウーロン茶で我慢しながら、やはり土産の生ハムとチーズに舌鼓を打つ。

「それがさ、辞めずに済んだのよね。むしろ相手が、しばらく操縦の路線を変えるって話になったみたい。たぶん奥さんのプッシュで」

 胸に愛らしいイラストのついた長袖のロングワンピースを着たマリカは、いつものように率直な口調で話しだす。
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