空しか、見えない
暑さ凌ぎに集うのか、店内は込み合っていたので、奥のテーブル席に通される。
「今日は、他には誰か?」
まゆみに訊ねられてはじめて、誰も誘っていなかったと気づく。本ならひとりで家で読めばいいのに、誰かと分かち合いたかったから来たはずなのだ。
「今日あたり、誰か来そうな人、いないかしら。ちょっと面白い本を見つけて」
「じゃあ、私が誘ってみようかな」
まゆみはそう言って、手の平でiPhoneの操作のふりをする。少し年上だけど、もう友達のように感じている。大人になってこんな風に新しく友達ができたのも、もう一度泳ぐと決めたからのように思える。
遠泳をすると決めて、佐千子は少なくとも自分は少し変わったと感じている。こんな風に、ひとりでふらっとバーに入るのも、前なら緊張してできなかったはずだ。
「今日は、他には誰か?」
まゆみに訊ねられてはじめて、誰も誘っていなかったと気づく。本ならひとりで家で読めばいいのに、誰かと分かち合いたかったから来たはずなのだ。
「今日あたり、誰か来そうな人、いないかしら。ちょっと面白い本を見つけて」
「じゃあ、私が誘ってみようかな」
まゆみはそう言って、手の平でiPhoneの操作のふりをする。少し年上だけど、もう友達のように感じている。大人になってこんな風に新しく友達ができたのも、もう一度泳ぐと決めたからのように思える。
遠泳をすると決めて、佐千子は少なくとも自分は少し変わったと感じている。こんな風に、ひとりでふらっとバーに入るのも、前なら緊張してできなかったはずだ。