空しか、見えない
 ごじべえに、予定通り到着。
 ごじべえのおじさんが、玄関のところで水まきをして待っていてくれた。

「おう、いらっしゃい」

「あれ、その犬?」

 ごじべえのおじさんの手につながれていた先に、しょぼくれた姿で犬がうずくまっている。水を浴びさせてもらって、舌を出している。

「ゴスケ、お前生きてたのか? そうだよね、おじさん」

「その通り、よく覚えていてくれたな」

 おじさんの声に、車から降りた環が、全身ずぶ濡れのゴスケに抱きつく。

「去年の暮れは、少し入院してたんだけどさ、夏にはまたこの通り、看板犬でね」

 おじさんが目を細めて言う。

「お前が、ゴスケくん?」

 まゆみさんも、頭を撫でる。

「チーズ、あるわよ」

 マリカが目を見てそう言うと、ゴスケはわん! と一声吠える。
 おじさんの放水した水飛沫の後には、小さな虹がかかった。

< 675 / 700 >

この作品をシェア

pagetop