空しか、見えない
 そうそう、これだ。市町村合併以前のままの町名が刻まれている。昔から駅舎の壁に掲げられていたのだ。
 佐千子はなぜなのか、この文章が好ましく感じられて、特に「永く子孫に伝えよう」のくだりは、列車が発つまで何度も声に出さずに読んだほどだった。
 だんだん、鼓動が高鳴ってきた。
 いよいよ、このホームの階段を渡って駅舎を出て、10分もすれば、仲間たちが顔を揃えるはずなのだ。本当に、みんなやって来るのだろうか。
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