空しか、見えない
 ふたりで改札をくぐり抜けようとすると、切符を受け取った駅員さんが笑顔を浮かべる。

「お、君たち遠泳やったんだね?」

「はい、もうだいぶ昔に」

 首から下げると、もう開き直るしかない。心の中に風が吹くような、そんな気持ちを感じたのも久しぶりだった。
 岩井海岸は、すでに100年近く、遠泳で知られる。遠泳も臨海学校も、盛んに行われているらしい。
 命札の形状は様々だけれど、おしゃもじやふんどしの子どもたちが、大勢集った。
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