愛してるが言えなくて
私は良恵さんに恩を仇で返す事になってしまった。
裏切られ続けた中で、自分から人を裏切ったのは初めてだった。
でも罪の意識は無かった。
今まで散々人に裏切られて傷つけられてきた私は、
人の常識とか良識なんて持ち合わせてなかった。
私が出ていく時、良恵さんは泣いていた。
私をこんな風にしたのは、お金を与えた自分のせいだと、
自分を責めていた。
『良恵さんのせいじゃない、私がこうなったのは生まれてきたせいだよ。』
そう言い残して、良恵さんのスナックを出た。