愛してるが言えなくて


私はあてもなくフラフラと夜の街を歩いていた。


こんな時に話を聞いてくれるような友達もいない。



私は独りだった。




『お姉さん、可愛いね〜今ドコのお店にいるの?』



気付いたら私は夜の繁華街にいた。



『お金、たくさん貰えるの?』


話し掛けてきた男に聞いた。



『お姉さんくらい可愛かったら月100は稼げるよ』


『100?風俗?』



『あはは、お姉さん面白いね〜うちは健全なキャバクラだから安心して?』



(キャバクラか…暇潰しにはなるか…)



私はキャッチの男に付いて行った。



『じゃあ、ここに生年月日と名前と住所書いて、あと身分証明書ある?』



私は免許証を出した。


4年間のあいだに男が教習所だけは通わせてくれた。




『二村愛美(フタムラエミ)ちゃんかぁ…えっ今日、誕生日?』


『…えっ?』



ずっと家にこもりっきりだったせいで、日付の感覚が無かった。



(今日で二十歳だったんだ…)



二十歳の誕生日に捨てられたと思ったら、


おかしくて笑えてきた。



『フフッ』


『エミちゃん?どうかした?』


キャッチの男が不思議そうに顔を覗きこむ。



『…別に、何でもないです』


明日から、このキャバクラで働く事になった。



< 3 / 148 >

この作品をシェア

pagetop