かくれんぼ - 大人になりきれない大人たち -
「とりあえずそのお金は美来のものだ。使いなさい」
父親は再び私のほうに通帳を置く。
「お父さんは、仕事のことも正紀君のことももうこれ以上は言わない。ただ…」
「?」
「美来は母親なんだぞ? いつでも大地のことを1番に考えなさい」
父親はそう言い残して、先に部屋を出て行ってしまった。
「…お姉ちゃん。私は本気で正紀が好きなの」
私は小さな声でそう呟く。
「いずれは大地と3人で生きていければって思ってる。正紀もそう言って…」
「美来、あなたは甘いわよ」
「え?」