かくれんぼ - 大人になりきれない大人たち -
「正紀…」
こんな文字ばかりの難しい本、正紀には苦痛だろうに。
彼も彼なりに大地の病気のことを知ろうとしてくれてるんだ。
きっとすごく頑張ってくれてる。
なのに私、正紀にあんな風に言って…。
「…ん。美来?」
正紀が眠そうな目を擦りながらソファから起き上がる。
「起きたの?」
「あれ、何? この美味そうな臭いは」
キッチンのほうを覗き込む正紀。
「ご馳走の臭い」
さすが正紀…、嗅覚が鋭い。
「そうだよ。ご馳走!」
「え? 何で?」