かくれんぼ - 大人になりきれない大人たち -
「何でそうも疑い深いワケ?」
「だって…」
当時はそんな素振り1つも見せなかった。
まあ、私だって見せなかったけど。
「もし そうだったとしても昔の話。もう手遅れだよ」
「手遅れねぇ…」
ゆかりはそう呟いて、バッグから難しそうな本を取り出す。
「ねぇ、ゆかりは? ゆかりは好きな人いないの?」
「いないよ。今はそれどころじゃない」
「敦は? この間来なくてガッカリしてたじゃん」
「…あ、あれはっ」
「ん?」
「まあ 確かに昔は気にはなってたけど…、昔の話! アンタが言うのと同じだよ」
「…」