かくれんぼ - 大人になりきれない大人たち -

「みたいだね」

「あーあ、しくじったなぁ」

脱力してベンチに寝そべる正紀。

「でもさ」

「ん?」

「仮に当時それが分かってても、俺は何もできなかったと思うわ」

「まあ小学生ですから」

「んー。ていうか、やっぱり好きだとさえ言えなかったと思う」

「…」


そうだね、きっと私も同じだよ。

両思いの確率が高そうな恋だって、自分の気持ちを素直に伝えるのは難しい。

自信なんて全く持てない。

失う怖さのほうがずっと大きくて。

…10代前半の恋なんてそんなもんさ。






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