フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「慎二……」
私は、彼を、心の底から軽蔑した。
「東子。昨日の話は無かった事にしよう。俺のところへ戻って来てくれないか」
そして、彼の全てに、私の魂が拒否反応を起こした。
「美月とは別れる」
「あなたは……子供を捨てるというの?」
慎二は苦虫を噛んだような顔のまま、黙り込んでしまった。
何も答えようとしない。
「なぜ、そうやって捨てる事ができるの! 私の事も、美月の事も」
何より。
「子供を捨てようだなんて!」
叫んだ時、なぜか、美月の姿が脳裏に浮かんだ。
愛に満ちた優しい笑みを浮かべて、慈しむようにお腹をさする美月の姿が。
突然、声を荒げた私に、慎二が驚きの表情をうかべる。
この男には分からないでしょうね。
「慎二は捨てられた事がないから、平気な顔でそんな事が言えるのよ!」
やるせなくて、体がぶるぶる震えた。
「東子……どうしたんだよ、落ち着いて……俺の話を聞いてくれないか」
「聞きたくないわ! もう、顔も見たくない!」
「とう……」
愕然とした慎二が、力を失ったように私の手を離した。
「早く、美月のとこへ行って」
私はポインセチアの鉢を拾い上げ、葉に積もった雪を払い落とした。
とても惨めな気持ちでいっぱいだった。
真っ新な雪を払うと出て来たのは、燃えるような真っ赤な色だったから。
「帰ろう、東子さん」
ハルの声に、泣きそうになった。
「一緒に帰ろう」
その声は汚れなんて知らないような、清潔で透明な声だったから。
私は、彼を、心の底から軽蔑した。
「東子。昨日の話は無かった事にしよう。俺のところへ戻って来てくれないか」
そして、彼の全てに、私の魂が拒否反応を起こした。
「美月とは別れる」
「あなたは……子供を捨てるというの?」
慎二は苦虫を噛んだような顔のまま、黙り込んでしまった。
何も答えようとしない。
「なぜ、そうやって捨てる事ができるの! 私の事も、美月の事も」
何より。
「子供を捨てようだなんて!」
叫んだ時、なぜか、美月の姿が脳裏に浮かんだ。
愛に満ちた優しい笑みを浮かべて、慈しむようにお腹をさする美月の姿が。
突然、声を荒げた私に、慎二が驚きの表情をうかべる。
この男には分からないでしょうね。
「慎二は捨てられた事がないから、平気な顔でそんな事が言えるのよ!」
やるせなくて、体がぶるぶる震えた。
「東子……どうしたんだよ、落ち着いて……俺の話を聞いてくれないか」
「聞きたくないわ! もう、顔も見たくない!」
「とう……」
愕然とした慎二が、力を失ったように私の手を離した。
「早く、美月のとこへ行って」
私はポインセチアの鉢を拾い上げ、葉に積もった雪を払い落とした。
とても惨めな気持ちでいっぱいだった。
真っ新な雪を払うと出て来たのは、燃えるような真っ赤な色だったから。
「帰ろう、東子さん」
ハルの声に、泣きそうになった。
「一緒に帰ろう」
その声は汚れなんて知らないような、清潔で透明な声だったから。