フィレンツェの恋人~L'amore vero~
今度こそ落としてしまう事のないように、きつく。
「嫌! いい加減にしてっ!」
もう、この男と関わりたくないと思った。
そして、ポインセチアごとぶうんと腕を振り下ろし、渾身の力で慎二という存在を払い落そうとした時、
「……えっ……ああっ!」
電光石火のごとく一気に腕が軽くなり、その反動で雪道の上に尻餅をついた。
とっさにぎゅっと閉じた目を開くと、
「しつこい男は嫌われるよ」
抱きしめていたポインセチア越しにあったのは、大きな後姿だった。
「……ハル」
「東子さんに触れないで」
ハル越しで雪に打たれる慎二の顔色がみるみるうちに変わっていった。
「何を偉そうに」
自分より頭ひとつ分高い背のハルを睨み上げて、
「まだケツの青いガキじゃないか」
なんて辛口を叩きながらも、
「お前に何ができるっていうんだよ。ばかばかしい」
慎二は一歩ずつ、革靴のかかとで雪を削りながら、青ざめた顔で後退して行く。
「もう、東子さんに関わらないで。いいね?」
「……は?」
「いいね!」
う、と言葉を飲んだ慎二に、
「いいね!」
ハルが一歩詰め寄った。
「なんでお前にそんな事……関係ない事だろ」
慎二が一歩、後退する。
ハルがその分だけ、詰め寄る。
「それが、そうでもないんだ。関係あるから、ぼくは言ってるんだよ。大人なのに、分からないの?」
「嫌! いい加減にしてっ!」
もう、この男と関わりたくないと思った。
そして、ポインセチアごとぶうんと腕を振り下ろし、渾身の力で慎二という存在を払い落そうとした時、
「……えっ……ああっ!」
電光石火のごとく一気に腕が軽くなり、その反動で雪道の上に尻餅をついた。
とっさにぎゅっと閉じた目を開くと、
「しつこい男は嫌われるよ」
抱きしめていたポインセチア越しにあったのは、大きな後姿だった。
「……ハル」
「東子さんに触れないで」
ハル越しで雪に打たれる慎二の顔色がみるみるうちに変わっていった。
「何を偉そうに」
自分より頭ひとつ分高い背のハルを睨み上げて、
「まだケツの青いガキじゃないか」
なんて辛口を叩きながらも、
「お前に何ができるっていうんだよ。ばかばかしい」
慎二は一歩ずつ、革靴のかかとで雪を削りながら、青ざめた顔で後退して行く。
「もう、東子さんに関わらないで。いいね?」
「……は?」
「いいね!」
う、と言葉を飲んだ慎二に、
「いいね!」
ハルが一歩詰め寄った。
「なんでお前にそんな事……関係ない事だろ」
慎二が一歩、後退する。
ハルがその分だけ、詰め寄る。
「それが、そうでもないんだ。関係あるから、ぼくは言ってるんだよ。大人なのに、分からないの?」