フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「今夜、19時。場所は、プリンスホテルの最上階のレストラン」
繭が言った事を、記入していく。
「分かった。じゃあ、後で私から桔平に電話入れてみる」
「うん。桔平、今頃、別口の取材中だと思うから、夕方かけてみてくれる?」
「ええ。そうする」
桔平は主に、外資系企業の経済関連の事を記事にするフリーライターだ。
駆け出しの頃はまったく仕事が無いにに等しかった桔平も、最近ではその才能を認められ、徐々に名が知れるようになってきている。
鷹司グループは外資系企業の中でも最大手のIT企業グループで、なかなか接触ができないらしい。
その鷹司グループの会長である鷹司一郎から、今回、直々に指名を受けたそうなのだ。
ある日、経済雑誌に目を通した鷹司一郎の目に、桔平の記事がとまったのだと繭は言う。
おもしろい事を書いている若手のライターがいる、と。
「その時の記事がこれなんだけど」
と、繭がその雑誌を見せてくれた。
【鷹司グループと九条グループの明暗】
昼休み時間の残量を気にしつつ、その記事にざっと目を通す事にした。
――――――――――――――
今、世界のIT業界を揺るがす、日本の鷹がいる。
――――――――――――――
「これは、鷹司側が食いつくのも無理はないわね」
――――――――――――――
現在はイタリアを拠点にトップを走る九条グループだが、その背面にぴたりと着いているのが、フランスを拠点とする鷹司グループだ。
今、鷹司グループの成長が、凄まじい。
飛ぶ鳥を撃ち落とす勢いだ。
鷹司グループが九条グループを追い抜くのは、時間の問題と言えるかもしれないと僕は思う。
しかし、この2社が手を携えればさらなる企業拡大に繋がる。が、そうはいかないのがこの2社。創業当時からのライバルなのだ。
時は、平成。戦国時代のように和睦を結ぶ事は難しい。
何はともあれ、この2社のトップ争奪戦は日本の経済にも大きく関わって来る事は間違いないだろう。
長きに渡る因縁の争いから、今後も目が離せない。
――――――――――――――
「……フリーライター、柏木、桔平、か。まあ、よいしょされている鷹司側が、この内容に食いつくのは当然ね。私には関係のない世界だけれど」
ぱたり、と雑誌を閉じて返すと、
「と、言うか。難しすぎて、わたしにはさっぱり」
へへっ、とはにかみながら雑誌を受け取り、全く興味ありませんと言わんばかりに、繭は即座にバッグに押し込んだ。
そして、繭はかしこまって言った。
「それで……今夜のお礼は、いかほどに……?」
私はつい吹き出してしまった。
繭が言った事を、記入していく。
「分かった。じゃあ、後で私から桔平に電話入れてみる」
「うん。桔平、今頃、別口の取材中だと思うから、夕方かけてみてくれる?」
「ええ。そうする」
桔平は主に、外資系企業の経済関連の事を記事にするフリーライターだ。
駆け出しの頃はまったく仕事が無いにに等しかった桔平も、最近ではその才能を認められ、徐々に名が知れるようになってきている。
鷹司グループは外資系企業の中でも最大手のIT企業グループで、なかなか接触ができないらしい。
その鷹司グループの会長である鷹司一郎から、今回、直々に指名を受けたそうなのだ。
ある日、経済雑誌に目を通した鷹司一郎の目に、桔平の記事がとまったのだと繭は言う。
おもしろい事を書いている若手のライターがいる、と。
「その時の記事がこれなんだけど」
と、繭がその雑誌を見せてくれた。
【鷹司グループと九条グループの明暗】
昼休み時間の残量を気にしつつ、その記事にざっと目を通す事にした。
――――――――――――――
今、世界のIT業界を揺るがす、日本の鷹がいる。
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「これは、鷹司側が食いつくのも無理はないわね」
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現在はイタリアを拠点にトップを走る九条グループだが、その背面にぴたりと着いているのが、フランスを拠点とする鷹司グループだ。
今、鷹司グループの成長が、凄まじい。
飛ぶ鳥を撃ち落とす勢いだ。
鷹司グループが九条グループを追い抜くのは、時間の問題と言えるかもしれないと僕は思う。
しかし、この2社が手を携えればさらなる企業拡大に繋がる。が、そうはいかないのがこの2社。創業当時からのライバルなのだ。
時は、平成。戦国時代のように和睦を結ぶ事は難しい。
何はともあれ、この2社のトップ争奪戦は日本の経済にも大きく関わって来る事は間違いないだろう。
長きに渡る因縁の争いから、今後も目が離せない。
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「……フリーライター、柏木、桔平、か。まあ、よいしょされている鷹司側が、この内容に食いつくのは当然ね。私には関係のない世界だけれど」
ぱたり、と雑誌を閉じて返すと、
「と、言うか。難しすぎて、わたしにはさっぱり」
へへっ、とはにかみながら雑誌を受け取り、全く興味ありませんと言わんばかりに、繭は即座にバッグに押し込んだ。
そして、繭はかしこまって言った。
「それで……今夜のお礼は、いかほどに……?」
私はつい吹き出してしまった。