フィレンツェの恋人~L'amore vero~
高校生がこんな夜に、こんな陰気くさい場所で、学生服だけの無防備な姿で何をしているのだろう。
「ねえったら」
さすがに見過ごす事が、私にはできなかった。
「凍死しても知らないわよ」
蹲る彼の肩をゆすった時、その存在に気づいた。
「何、これ」
蹲る彼は首から麻ひものような物に、厚手の紙をぶら下げていた。
何か、文字が書かれている事に気付き、鞄から携帯電話を取り出してその明りを当ててみた。
あなたを信じます
ぼくを拾ってください ポチ
「ポチ、って……」
面倒な事に触れてしまった気がした。
拾ってください、だなんて。
この子、家出でもしたのだろうか。
最低なクリスマスイヴに、今度は面倒な事に巻き込まれるのはごめんだ。
「こんなつまらない事していないで、家に帰りなさい」
私はとっさに紙を手離し、先を急いだ。
でも、と立ち止まる。
振り返ると、そこにはやっぱり膝を抱きしめて蹲る姿があった。
動くような気配は、ない。
私は小さく息を落とした。
気温は……零度、といったところか。
日付が変わる頃には氷点下になるかもしれない。
そして、あの子は凍死するかもしれない。
「ねえ、ポチ」
声を掛けると、彼の肩が動いた。
ポチ、を連れて帰る、というのはどうだろう。
そうすれば、ポチは凍死せずに済む。
私は感謝される側なのではないだろうか。
ポチの両親にはもちろん、友達や、ポチに携わる人々から。
「見ず知らずの人間を、あなたは信じるというの? 人間てね、恐ろしい魔物なのよ。簡単に、裏切る」
それより、何より。
ポチを拾えば、今夜、私は一人で過ごさずに済む。
あのマンションで、孤独にならずに済む。
「私も裏切ると思うわ、きっと。恐ろしい人間だもの。それでも信じるというのなら、立って」
「ねえったら」
さすがに見過ごす事が、私にはできなかった。
「凍死しても知らないわよ」
蹲る彼の肩をゆすった時、その存在に気づいた。
「何、これ」
蹲る彼は首から麻ひものような物に、厚手の紙をぶら下げていた。
何か、文字が書かれている事に気付き、鞄から携帯電話を取り出してその明りを当ててみた。
あなたを信じます
ぼくを拾ってください ポチ
「ポチ、って……」
面倒な事に触れてしまった気がした。
拾ってください、だなんて。
この子、家出でもしたのだろうか。
最低なクリスマスイヴに、今度は面倒な事に巻き込まれるのはごめんだ。
「こんなつまらない事していないで、家に帰りなさい」
私はとっさに紙を手離し、先を急いだ。
でも、と立ち止まる。
振り返ると、そこにはやっぱり膝を抱きしめて蹲る姿があった。
動くような気配は、ない。
私は小さく息を落とした。
気温は……零度、といったところか。
日付が変わる頃には氷点下になるかもしれない。
そして、あの子は凍死するかもしれない。
「ねえ、ポチ」
声を掛けると、彼の肩が動いた。
ポチ、を連れて帰る、というのはどうだろう。
そうすれば、ポチは凍死せずに済む。
私は感謝される側なのではないだろうか。
ポチの両親にはもちろん、友達や、ポチに携わる人々から。
「見ず知らずの人間を、あなたは信じるというの? 人間てね、恐ろしい魔物なのよ。簡単に、裏切る」
それより、何より。
ポチを拾えば、今夜、私は一人で過ごさずに済む。
あのマンションで、孤独にならずに済む。
「私も裏切ると思うわ、きっと。恐ろしい人間だもの。それでも信じるというのなら、立って」