フィレンツェの恋人~L'amore vero~
月の女神アルテミスは、オリオンのことが大好きでした。
アルテミスは、オリオンに恋をしていたのです。
私は静かに目を閉じた。
ハルの声に耳を傾けながら、穏やかで深い眠りに堕ちていったのは、真夜中に小雪がちらつく、冬の星座が瞬く幻想的な夜だった。
目を閉じる直前に見たアルテミスは、トパーズのように艶やかな色をしていた。
アルテミスは強い女性ね。
だって、大好きなオリオンを失っても、こんなに美しく輝けるんだもの。
私には、到底無理だわ。
例えば。
ハルが居なくなったら、きっと。
私は硝子のように割れて砕けてしまうもの。
明確な理由は分からないけれど、今、ハルという存在を失ってしまったら。
私は硝子のように砕けて、粉々に砕けて散って、もう二度と元には戻れないのでしょうね。
だから、私はハルの手をしっかり握りしめて、眠りに堕ちていった。
「アルテミスは、オリオンに、恋をしていたのです」
私は、何も気付いていなかった。
数日後、この身に起ころうとしている出来事など、知る由もなかった。
1/4 23:55
From 小嶺 華穂
Sub
――――――――――――――
夜分遅くにごめんなさい。
近いうち、食事どうかと思って。
例の移動の事は勿論、ひとつ、聞きたい事があるの。
都合の良い日を教えてくれない?
たまにはふたりで飲みに行きましょうよ。
思いがけない事はいつだって突然で。
何の前触れもなく、唐突で。
だけど、身に起こる出来事たちは、きっと、必然で。
“ハル”を知る日は、突然、やってきた。
アルテミスは、オリオンに恋をしていたのです。
私は静かに目を閉じた。
ハルの声に耳を傾けながら、穏やかで深い眠りに堕ちていったのは、真夜中に小雪がちらつく、冬の星座が瞬く幻想的な夜だった。
目を閉じる直前に見たアルテミスは、トパーズのように艶やかな色をしていた。
アルテミスは強い女性ね。
だって、大好きなオリオンを失っても、こんなに美しく輝けるんだもの。
私には、到底無理だわ。
例えば。
ハルが居なくなったら、きっと。
私は硝子のように割れて砕けてしまうもの。
明確な理由は分からないけれど、今、ハルという存在を失ってしまったら。
私は硝子のように砕けて、粉々に砕けて散って、もう二度と元には戻れないのでしょうね。
だから、私はハルの手をしっかり握りしめて、眠りに堕ちていった。
「アルテミスは、オリオンに、恋をしていたのです」
私は、何も気付いていなかった。
数日後、この身に起ころうとしている出来事など、知る由もなかった。
1/4 23:55
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夜分遅くにごめんなさい。
近いうち、食事どうかと思って。
例の移動の事は勿論、ひとつ、聞きたい事があるの。
都合の良い日を教えてくれない?
たまにはふたりで飲みに行きましょうよ。
思いがけない事はいつだって突然で。
何の前触れもなく、唐突で。
だけど、身に起こる出来事たちは、きっと、必然で。
“ハル”を知る日は、突然、やってきた。