フィレンツェの恋人~L'amore vero~
だから、ジョゼットや学校のフランス人の友人が一緒でない限り、私は右岸へ渡る事はなかった。
けれど、とても良く晴れ渡った夏の休日に、私はふと思い立ってしまったのだ。
「He,Josette,Pascal」
パスカルと映画を観に出かけようと準備をしていたジョゼットと、迎えに来ていたパスカルに私はいつになく好奇心旺盛に詰め寄った。
ひとりで右岸に渡って冒険して来るわ、と。
「Quoi? (何ですって?)」
すると、ジョゼットは鼻の穴を大きくして、みるみるうちに顔色を変えた。
「……encore une fois(もう一度言って)」
「rive droite! (右岸よ)」
いちばんの理由は、この4ヶ月の間に身に着けた自分の語学力を試してみたくなった、だった。
もともと、私は人見知りなんてしない性格だし、幼い頃から好奇心の塊みたいな女の子だった。
思い立ったら、行動あるのみ。
一度はやってみないと気が済まないたちで、ある意味、私はせっかちな性分でもある。
「Kaho……」
あなた、気は確かなの、とジョゼットは私にマシンガンの如く、質問攻めをした。
「Quand? (いつ?)」
今日よ。
「Pourquoi? (なぜ?)」
語学力を試すためよ。
「Avec qui? (誰と?)」
ひとりで。
「……Avec qui! (誰と!)」
だからね、ひとりで、と私が答えたのとほぼ同時に、ジョゼットは大きな声を出した。
「deraisonnable! (無理よ)risque! (危険だわ)」
「Non,ca va(いいえ、大丈夫よ)」
「Kaho!」
あなたはパリを何も分かっていないわ、女の子のひとり歩きがどんなに危険な事か、とジョゼットは口のネジが取れたようにぺらぺらとしゃべり倒した。
けれど、とても良く晴れ渡った夏の休日に、私はふと思い立ってしまったのだ。
「He,Josette,Pascal」
パスカルと映画を観に出かけようと準備をしていたジョゼットと、迎えに来ていたパスカルに私はいつになく好奇心旺盛に詰め寄った。
ひとりで右岸に渡って冒険して来るわ、と。
「Quoi? (何ですって?)」
すると、ジョゼットは鼻の穴を大きくして、みるみるうちに顔色を変えた。
「……encore une fois(もう一度言って)」
「rive droite! (右岸よ)」
いちばんの理由は、この4ヶ月の間に身に着けた自分の語学力を試してみたくなった、だった。
もともと、私は人見知りなんてしない性格だし、幼い頃から好奇心の塊みたいな女の子だった。
思い立ったら、行動あるのみ。
一度はやってみないと気が済まないたちで、ある意味、私はせっかちな性分でもある。
「Kaho……」
あなた、気は確かなの、とジョゼットは私にマシンガンの如く、質問攻めをした。
「Quand? (いつ?)」
今日よ。
「Pourquoi? (なぜ?)」
語学力を試すためよ。
「Avec qui? (誰と?)」
ひとりで。
「……Avec qui! (誰と!)」
だからね、ひとりで、と私が答えたのとほぼ同時に、ジョゼットは大きな声を出した。
「deraisonnable! (無理よ)risque! (危険だわ)」
「Non,ca va(いいえ、大丈夫よ)」
「Kaho!」
あなたはパリを何も分かっていないわ、女の子のひとり歩きがどんなに危険な事か、とジョゼットは口のネジが取れたようにぺらぺらとしゃべり倒した。