フィレンツェの恋人~L'amore vero~
牧瀬 東子(まきせ とうこ)。
二十五歳。
大手広告代理店の受付嬢の仕事は、もう五年目になる。
本当に、ほんの数分前だったのだ。
来年四月に結婚の約束をしている恋人に、私は捨てられた。
いとも、あっさりと。
もうすでに両家の顔合わせも結納も、式の日取りまで決まっていたのに。
それでも、容赦は無かった。
「バカにして……バカにしてっ!」
男は結局、甘ったるい香りの若い女の肌に吸い寄せられる、単純で愚かな生き物だ。
どいつもこいつも。
「私のこと、バカにしてっ」
そして、若い女は悪魔だ。
欲しいモノのためなら、裏切りなんて朝飯前。
どんな事だってする、小作な詐欺師のような、化け物だ。
そう思いながら、私は泣きやむ事が出来なかった。
大通りには定番のクリスマスソングが流れ、更け行く夜にクリスマスツリーの明りが煌びやかな輝きを散りばめていた。
こんなにも美しい夜に、とことんツイてない。
まるで、体半分を斧がナタで削ぎ落とされたような気分だ。
ライトアップされた大通りは恋人たちであふれ返り、完璧な聖地になっているのに。
その空間をふらふらさ迷いながら、私は二十五にもなって、わんわん声を上げて泣いた。
二十五歳。
大手広告代理店の受付嬢の仕事は、もう五年目になる。
本当に、ほんの数分前だったのだ。
来年四月に結婚の約束をしている恋人に、私は捨てられた。
いとも、あっさりと。
もうすでに両家の顔合わせも結納も、式の日取りまで決まっていたのに。
それでも、容赦は無かった。
「バカにして……バカにしてっ!」
男は結局、甘ったるい香りの若い女の肌に吸い寄せられる、単純で愚かな生き物だ。
どいつもこいつも。
「私のこと、バカにしてっ」
そして、若い女は悪魔だ。
欲しいモノのためなら、裏切りなんて朝飯前。
どんな事だってする、小作な詐欺師のような、化け物だ。
そう思いながら、私は泣きやむ事が出来なかった。
大通りには定番のクリスマスソングが流れ、更け行く夜にクリスマスツリーの明りが煌びやかな輝きを散りばめていた。
こんなにも美しい夜に、とことんツイてない。
まるで、体半分を斧がナタで削ぎ落とされたような気分だ。
ライトアップされた大通りは恋人たちであふれ返り、完璧な聖地になっているのに。
その空間をふらふらさ迷いながら、私は二十五にもなって、わんわん声を上げて泣いた。