フィレンツェの恋人~L'amore vero~
おかしいものだ。
私は昨日、あれほどまでに悲しみに暮れていたはずなのに、今はそうでもないのだ。
それくらい、ハルという謎だらけの男の子の正体が気になって仕方ない。
「東子さんだって、そうだろ?」
颯爽とした足取りで歩きながら、ハルは続けた。
「気付いた時にはもう生きていて、生活していただろ?」
「……たしかに、そうね」
それしか答える事ができなかった。
私はすっかり、ハルの独特なペースにぐるぐると巻きこまれていた。
「うわー……本当にどうなっているんだよ。頭がおかしくなりそうだよ」
街で一番の百貨店に入るなり、ハルが頭を抱えた。
「なぜ、こんなに人が居るの」
信じられないよ、なんて今にも気が狂ってしまいそうな様子だ。
歩く事もままならないほど、店内は隅から隅まで人で混雑している。
「クリスマスだからよ」
「意味が分からないよ。とにかく早く買い物を終わらせて、さっさと帰ろう。本当に息がつまりそうなんだ」
今来たばかりだというのに、ハルはうんざり顔だ。
「一刻も早く帰りたい」
「分かったわ」
あまりにも辛そうな様子に、頷くしかなかった。
「地下で食材を買ったら帰りましょう。それで、早めの夕食にしましょう」
「そうして。お願い」
私たちは人波をすり抜けながら、地下食品売り場へ続くエスカレーターへ向かった。
その時、片手に紙袋を下げたスーツの男と肩を衝突させてしまった。
「あっ、すみませ……」
男の顔を見て、私は言葉を飲み込んだ。
私は昨日、あれほどまでに悲しみに暮れていたはずなのに、今はそうでもないのだ。
それくらい、ハルという謎だらけの男の子の正体が気になって仕方ない。
「東子さんだって、そうだろ?」
颯爽とした足取りで歩きながら、ハルは続けた。
「気付いた時にはもう生きていて、生活していただろ?」
「……たしかに、そうね」
それしか答える事ができなかった。
私はすっかり、ハルの独特なペースにぐるぐると巻きこまれていた。
「うわー……本当にどうなっているんだよ。頭がおかしくなりそうだよ」
街で一番の百貨店に入るなり、ハルが頭を抱えた。
「なぜ、こんなに人が居るの」
信じられないよ、なんて今にも気が狂ってしまいそうな様子だ。
歩く事もままならないほど、店内は隅から隅まで人で混雑している。
「クリスマスだからよ」
「意味が分からないよ。とにかく早く買い物を終わらせて、さっさと帰ろう。本当に息がつまりそうなんだ」
今来たばかりだというのに、ハルはうんざり顔だ。
「一刻も早く帰りたい」
「分かったわ」
あまりにも辛そうな様子に、頷くしかなかった。
「地下で食材を買ったら帰りましょう。それで、早めの夕食にしましょう」
「そうして。お願い」
私たちは人波をすり抜けながら、地下食品売り場へ続くエスカレーターへ向かった。
その時、片手に紙袋を下げたスーツの男と肩を衝突させてしまった。
「あっ、すみませ……」
男の顔を見て、私は言葉を飲み込んだ。