フィレンツェの恋人~L'amore vero~
同じ二十五歳だというのに、私とは大違いだ。


思い立ったら即行動、やってみなけりゃ分からない、ハングリー精神の持ち主である彼女は、いつも輝きに満ちていて、外見も中身も綺麗だ。


今では立派な、広告代理店企画課の女チーフ。


「……なんだか、修羅場みたいだけど」


大丈夫? 、と華穂は小声になった。


「あ、ううん。たいした事じゃないのよ」


「……そ、う」


華穂が声を詰まらせた。


おそらく、腑に落ちないのだろう。


華穂は誰に対しても裏表がなく、さばさばしていて、思った事を顔に出す。


とても分かりやすい。


こげ茶色のショートヘアーに、すらりとした長身で、いつも清潔感がみなぎっている。


久しぶりに顔を合わせたっていうのに、変なところを見られてしまった。


「あの、牧瀬ちゃ」


「華穂は買い物?」


質問される前に、と早口で聞いた。


「今日はクリスマスだものね」


「あ、うん。予約していたケーキとシャンパンを受け取りにね」


なんて笑顔で答えた華穂が、慎二を見た途端に綺麗な表情をピキリと引きつらせた。


「あ、何だかお邪魔したみたいね。じゃあ、また」


たまにはランチに行こう、と華穂が背中を向ける。


その時だった。


「大した事、か。大した事じゃないか!」


慎二が汚らしい声を荒げた。


華穂が振り向く。


「……あ」


私は、とっさに華穂から目を反らした。


見ないで。


早く行って。


早く、立ち去って!
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