フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「嘘を付くな! 今だって一緒に帰ろうとしてるじゃないか」
「だったら、何だというの?」
降る雪はさらに強さを増した。
もう、目の前にある慎二の表情でさえ、白いフィルム越しのように感じる。
「もう、慎二には関係ない事じゃないの。だって、そうでしょう?」
私を捨てたじゃない。
これまでの四年間をあっさりと捨てたのは、慎二の方じゃない。
「違う?」
涙を堪えて、慎二を睨み付けた。
足元に眠るポインセチアに、雪が薄く積もって行く。
震える声を絞り出す。
「慎二。あなたが私を……捨てたのよ」
本当の親に捨てられた私を、また、捨てたのよ。
美月を選んだのは、あなたなのに。
背中にハルの視線を感じる。
けれど、振り向く事は愚か、動く事すらできなかった。
ふう、と息を整えて、慎二が口を開いた。
「捨てたくて捨てたわけじゃない。君と別れたくて別れたわけじゃない」
「今更、何を言ってもどうにもならないじゃない。それは言い訳だわ」
今更、何を言われても、もう彼を信じる事なんてできない。
「だって、あなたは父親になるのよ。どうにもならない事だもの」
私の腕を掴んでいた慎二の手に、異様な力がこもったのが分かる。
コートの上からでも、慎二の指の形がはっきりと感じられるくらいの強い力だった。
「あれは……じゃない」
慎二の唇がカタカタと震え、その細々とした声に首を傾げた。
「え?」
「あれは、俺の子じゃない」
その一言を聞いた瞬間に、私の体内で完璧な爆発が起こった。
「……何を、言うの」
ドン、そんな、衝突にも似たような音だった。
確かに小規模で、だけど確かに、決定的な爆発だった。
「だったら、何だというの?」
降る雪はさらに強さを増した。
もう、目の前にある慎二の表情でさえ、白いフィルム越しのように感じる。
「もう、慎二には関係ない事じゃないの。だって、そうでしょう?」
私を捨てたじゃない。
これまでの四年間をあっさりと捨てたのは、慎二の方じゃない。
「違う?」
涙を堪えて、慎二を睨み付けた。
足元に眠るポインセチアに、雪が薄く積もって行く。
震える声を絞り出す。
「慎二。あなたが私を……捨てたのよ」
本当の親に捨てられた私を、また、捨てたのよ。
美月を選んだのは、あなたなのに。
背中にハルの視線を感じる。
けれど、振り向く事は愚か、動く事すらできなかった。
ふう、と息を整えて、慎二が口を開いた。
「捨てたくて捨てたわけじゃない。君と別れたくて別れたわけじゃない」
「今更、何を言ってもどうにもならないじゃない。それは言い訳だわ」
今更、何を言われても、もう彼を信じる事なんてできない。
「だって、あなたは父親になるのよ。どうにもならない事だもの」
私の腕を掴んでいた慎二の手に、異様な力がこもったのが分かる。
コートの上からでも、慎二の指の形がはっきりと感じられるくらいの強い力だった。
「あれは……じゃない」
慎二の唇がカタカタと震え、その細々とした声に首を傾げた。
「え?」
「あれは、俺の子じゃない」
その一言を聞いた瞬間に、私の体内で完璧な爆発が起こった。
「……何を、言うの」
ドン、そんな、衝突にも似たような音だった。
確かに小規模で、だけど確かに、決定的な爆発だった。