一人鬼ごっこ
第八章 昔話
『普通の鬼ごっこは、鬼と逃げる人が居て、鬼が逃げる人を追い掛けるっすよね』

『そうですねえ』

『一人鬼ごっこも同じなんす――鬼は、行方不明者。逃げる人は次の標的っす』

 俺はその言葉に引っ掛かるものを感じた。

『鬼は逃げる人にしか見えないみたいっす。そして鬼が逃げる人を捕まえたら、今度は逃げる人が鬼っす』

『……あの、ちょっとよろしいですか?』

 アナウンサーがおずおずと言った。

『なんすか?』

『鬼が逃げる人を捕まえたら、鬼はどうなるのでしょうか?』

 それ丁度、俺も気になっていた。

『そういえば、そうねぇ……』

 気付くと隣で母親がテレビをじっと見ていた。

『あぁ、生まれ変わるんす』

『え?』

『鬼は、生まれ変わりたいから標的を追い掛け続けるんす』

 成る程……。
 人の心の醜さが分かるな。

『標的ってのは、逃げる人が最期に会った人――もしくは目が合った人っす』

 ふむふむ……それは前からテレビで言ってたな。

 その時、俺はある事に気付いた。

「それじゃあ……」

 この話の通りなら

「嘘だろ……」

 京介は
 実の母親に追い掛けられたのか?
 そして、実の母親に――

「――ひでぇよ」

 これじゃあ、あんまりだ。
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