一人鬼ごっこ
「ちあ……き……? 何して……」

『見て分かんない?』

 違う。
 こんなの千秋じゃない。
 こんな冷たい目をしたの
 こんな――――

「違う!!」

『……何が?』

「千秋は、俺を殺そうとしないだろ? そうだろ千秋……? 千秋……」


『つば――千秋が現れたの?』

 慎がそう聞いたが、答える余裕は無かったので軽く頷いた。
 直樹さんと慎が、俺の視線の先を見つめた。

『あそこに居るんか?』

 ――いいよな。
 慎達には、こんな冷たい目をした千秋が見えないのだから。

『椿……折角だから鬼ごっこしようよ。10秒だけ数えるから』

 千秋から、鬼ごっこの誘い。
 俺が負けない限り終わらない鬼ごっこの誘いを

「――分かった」

 俺は受けた。

 俺が、千秋を
 そして京介を
 皆を救ってみせる。

『数えるね。いーち……』

「ごめん!! 2人はここに居て!」

『は?』

 俺は部屋を飛び出した。

『さーん、しぃ……』

 鬼ごっこなら、家の中では完璧に捕まる。
 俺は外に出た。
 今は丁度昼の1時頃。
 太陽が照りつける。

 俺は走りだした。
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